書評: ねこはうす通信創刊号 | Mastodonブーム初期から現存する個人最大規模のテーマサーバーro-mastodonの構成・運営情報は一見の価値あり

Mastodon/book
概要

分散SNS関係の商業誌はほぼ全て読んだつもりでした。同人誌は手を出していなかったので、こちらもコンプリートしたくなりました。

検索したところ、こちらの同人誌がヒットして目についたため、余計な先入観などを持たずに電子版を購入して読んでみました。

評価

ro-mastodon (愛称RO丼) (https://ro-mastodon.puyo.jp) 運営者ののりこと他数名による、ro-mastodonとGoogle Cloudを中心とした雑多な内容の同人誌でした。

主な内容はro-mastodonとGoogle Cloudの話で、特にro-mastodonの内容が興味深かったです。

全60ページほどあり、20ページがro-mastodonでした。

ro-mastodonは2017年4月のMastoodnブーム初期から現在まで現存するMastodnサーバーで、ラグナロクオンラインのオンラインゲームのテーマサーバーです。

Mastodonブーム直後にも何度かメディアなどで紹介されていた記憶があります。

個人運営のテーマサーバーとしては、登録者数8900人、月間アクティブユーザー2400人と上位の規模です。

そのマシン構成や運営について詳しく説明されていました。

出版日は2020年とやや時間が経っていますが、今でも通用する内容のように感じました。

参考
p. 05: ro-mastodonについて

ro-mastodon (愛称RO丼) (https://ro-mastodon.puyo.jp) の概要の説明でした。

このサーバーはラグナロクオンライン (RO) のユーザー向けのテーマサーバーです。2017年4月のMastodonブーム直後に設置され、2023-04-04時点でも継続しているサーバーです。

2020-08-31時点でユーザー数7000名程度で、2023-04-04時点でも8900人の登録数で、個人運営のサーバーとしては上位の規模のサーバーです。削除機能は公開していないので、登録ユーザー数は増えるのみです。

2023-04-04時点の月間アクティブユーザーは2442人でした。

ここまでの規模になった詳細の理由は不明ですが、以下を理由として考察していました。

  1. Mastodonの流行
  2. ROの有名ブロガーの紹介
  3. Twitterでの告知のリツイート
  4. コミュニティーの不在

このサーバーの特徴は、身内の登録者内での交流がほぼ中心なところです。閉鎖しているわけではなく、外部サーバーと交流する人もいるもののかなり少数派で、逆に外部からフォローする人も少数派とのことです。話題が話題なだけに、自然とこうなったようです。

運用に関しては自分のできる範囲でのみ対応を行う方針で、無理や無茶をしないことを徹底しているようです。

p. 06: 構成と監視

サーバー環境の説明がありました。AWSで、EC2/RDS/S3などを使っているようです。

メディアの配信にはCloudFrontを当初使っていたものの、毎月1TBほどの転送で月1万円くらいかかっており、LighSailだとデータ転送量がある程度含まれているということで、こちらに変えたそうです。

メール送信にはSendGridで上限1.2万通のFreeプランでした。

監視はCloudWatchでリソース監視、StatusCake (www.statuscake.com) とUptimeRobot (uptimerobot.com) で無料枠の範囲で外形監視をしているそうです。監視内容はCPU使用率だけとのこと。

他に、cronを使って1時間に1回コンテンツを作成ているようで、これの監視にHealthChecks (healthchecks.io) を使っているとのこと。

p. 11: コミュニティーの運用

コミュニティーの運用についてルールなどの説明がありました。

アクティブユーザーが100名を超えると、ルールを厳格に適用しないと厳しいそうで、ルールを無視するユーザーがコミュニティーを引っ掻き回して、崩壊のきっかけになるそうです。

RO丼では以下の4のルールを設けているそうです。

  1. ローカルタイムラインはROやRO丼関連以外の書き込み禁止
  2. エログロ禁止
  3. ROやRO丼に無関係な画像・動画の添付禁止
  4. 特定の個人情報を不特定多数の要請禁止

この他に法律・条例の遵守が当然あります。

1は身内ネタで固まったり、趣味の話をしたくてきたのに、それができないことの回避が目的とのことでした。長寿コミュニティーのあるあるで、経験者ならではのルールでした。

2は1と同様に、好まないユーザーが多いという感触でも受けたそうです。

3は著作権関係の問題で、ROではゲーム内画像や二次創作が許可されているためのことでした。ルール違反で一番多いのはこれとのことです。

4もコミュニティーならではで、「昔ギルドにいた誰それさんの情報を求める」ようなものが実際に出てきて明文化したそうです。現実世界の犯罪に発展することがあるため、事前に対処したそうです。

なお、ルール違反があった場合、該当投稿を削除して、それで終わりとのこと。面倒なので特に警告もしていないそうです。ルール違反が多い場合ユーザーをBANしており、これも疲れるので警告しないそうです。

ルール周知の方法としては、以下3点の工夫をしていました。

  1. 登録時に誘導
  2. 新規登録者にルール説明用ユーザーの自動フォローさせて、ホーム画面にルールの投稿を表示
  3. 時々ルールと投稿

他に通報機能の報告内容もみているようです。

p. 16: 資金繰り

資金繰りについて話がありました。

RO丼は月1.4万円ほどかかっており、これは有志の支援でほぼ賄えているとのことです。

支援はPIXIV FANBOXで100-500円のコースを設けて、50名以上から支援があるとのことです。アクティブユーザーが2000人なので、2 %程度です。

支援の見返りは、AWSの明細の毎月公開で、500円コースは過去の同人誌のダウンロードや、クラウドの相談を設けているとのことで、ただ相談は一度もないそうです。

他にAmazonの欲しい物リストも募っていて、消耗品、アルコール飲料などが多いとのこと。

なお、Mastodon自体も支援を募っていて、著者は少額を支援しているそうです。支援すると、開発者用のDiscordに招待してもらえるそうです。

結論

ro-mastodonの運営が特に興味深い内容の同人誌でした。Google Cloudなどの話はあまり興味がわかず、頭に入りませんでした。

テーマサーバーで、閉鎖しているわけではないものの、外部とほぼ交流がないという、コミュニティー向けのやや特殊なサーバーに感じました。

私の知識がなく、AWS関係はよくわかりませんでしたが、同じくAWSでの運営を考える場合に、マシン構成など参考になりそうに感じました。

後は、運営の方針、資金繰りなども参考になりました。アクティブユーザーの1-5 %程度が支援に協力してくれるというのは一つの目安になりそうです。

同じくテーマサーバーの運営を考えている場合は、参考になると感じました。

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