概要
「Advent Calendar 2022おすすめ記事31選 | GNU social JP」で紹介した記事の中で、「いっそ0円おひとりさま鯖でFediverse始めてみませんか – 環偶記」「“タダ”でいろいろサーバーとか建てよう|Teruki Iida / 2P|note」で、無料で分散SNSを設置する際に、現状GCEというサービスだけが利用可能という話がありました。
他で調べても、「無料で使えるVPSサーバーまとめ | SUBSQU」にある通り、完全無料で利用可能なVPSは現状GoogleのGCEというサービスだけのようです。
今回、VPSで開発用サーバーの設置を検討することにしたので、このGCEについてまず整理します。
「Compute Engine: 仮想マシン(VM) | Google Cloud」が公式サイトです。Google Compute Engine (GCE) はGoogleのインフラで仮想マシンを作成・実行できるサービスで、Google Cloud (GC) というGoogleが提供するクラウドコンピューティングサービスの主要サービスの一つです。なお、Google Cloudは以前はGoogle Cloud Platformという名前でした。
サービス内容からして、GCEはVPS (Virtual Private Server)です。AWSのEC2相当のサービスです。仮想マシン1台を丸ごと借りるため、レンタルサーバーと異なり管理者権限を使用でき、何でもできます。
OSやミドルウェアを自由に選択可能で、要件に合わせて柔軟にサーバー環境を構築できます。
新規ユーザーには90日間限定の300 USDのクレジットが付与され、さらに、汎用マシン (e2-microインスタンス) を1か月あたり1台まで無料で利用できます。
完全無料で利用する際には、この「e2-microインスタンスの1か月1台まで無料」を利用することになります。こちらを詳しく整理します。
性能
性能が要件を満たさない場合、そもそも検討対象外になるため、まず、e2-microインスタンスの性能について確認します。
e2-microというのは、マシンタイプで、E2シリーズの物理マシンを利用した、microのリソース割り当てのVM (Virtual Machine) のようです。
性能表は「Compute Engine 汎用マシン ファミリー | Compute Engine ドキュメント | Google Cloud」にあります。e2-microを以下に抜粋します。
vCPUは仮想CPU (virtual CPU) のことです。フラクショナルvCPUは、VPSは仮想マシン上のゲストマシンが貸与されているイメージなので、ホストマシンのCPUに対するゲストマシンのCPUの比率のようです。したがって、このマシンは0.25 CPUが2個あるという意味になります。
メモリー1 GBには注意です。これは稼働、ビルド時の大きな制約になってきます。あまり、リッチで大掛かりなWebサービスの稼働、自前ビルドなどはできないので注意しましょう。
その他、最大下り帯域幅という制限がありますが、こちらはCloudflareなどのCDNサービスを利用すれば、多少は節約できるようです。
「いっそ0円おひとりさま鯖でFediverse始めてみませんか – 環偶記」によると、今は不明ですが、Misskeyは2 GBのメモリーが必要とのことなので、完全無料での設置は諦めるしかないでしょう。
Mastodonも厳しいのかもしれません。Pleroma/GNU socialなどはいけそうなので、開発用途で検討できるでしょう。実際に試してみたら、結果を追記します。
条件
マシンの性能がわかったので、無料利用の条件を確認します。
無料条件は「Google Cloud の無料プログラム」に記載があります。このGoogle Cloud の無料プログラムは、Always Freeとも呼ばれているようです。GCE部分を以下に抜粋します。
無料枠は利用時間に基づきます。上記は全合計となっています。なので、無料の稼働時間は短くなるものの、複数のインスタンスを無料で立てることも可能です。
条件の中では、中国とオーストラリアからサーバーにアクセスがあると課金が発生するので注意します。
e2-microの3リージョンのVMを使っておけばひとまず無料です。万が一、中国とオーストラリアと通信したとしても、金額は知れているでしょう。
ディスク容量30 GBは、サムネイル画像の自動生成を無効にすれば、分散SNSの単独サーバーであれば数年利用するのに十分だと思います。
2023-03-20 Mon 21:00追記。静的外部IPアドレスの設定などを行っていると、ネットワークサービスティアで、プレミアムとスタンダードの2種類の選択肢があり困惑しました。
「料金 | Network Service Tiers | Google Cloud」にある通り、「プレミアム ティアには Always Free の使用量上限が適用されます。」、「スタンダード ティアには Always Free の使用量上限は適用されません。」とあります。この記述を素直に読むと、プレミアムが無料対象で、スタンダードは課金対象ということになります。プレミアムのほうがランクが上なので、少々違和感があります。
ただ、「Network Service Tiers の概要 | Google Cloud」にある通りデフォルトはプレミアムで、「Does Network Service Tiers relate with Always Free Instances?」でも同様の解釈があり、さらに「Google Cloud 料金計算ツール」で計算してみると、プレミアムは1 GB以下だと課金されず、スタンダードだと課金表示されました。したがって、上記の通信下り1 GB/月はプレミアムとみなしてよさそうです。
その他、通常ではわずかな課金の発生する外部IPアドレスも、無料利用枠の利用に限り無課金です。
料金
無料条件を万が一超過した場合に備えて、料金も確認しておきます。
「料金 | Compute Engine: 仮想マシン(VM) | Google Cloud」に料金表があります。
内容をまとめるとだいたい以下のような金額です。
元々超過しない前提の利用だと思いますが、仮に超過しても1 USD、100円以内程度の月額請求になると思われます。
課金対象のVM/ディスク/通信の料金表を抜粋します。
マシンタイプ | 仮想 CPU 数 | メモリ | 料金(米ドル) | プリエンプティブル料金(米ドル) |
---|---|---|---|---|
e2-micro | 2 | 1GB | $0.00838 | $0.00251 |
e2-small | 2 | 2GB | $0.01675 | $0.00503 |
e2-medium | 2 | 4GB | $0.03351 | $0.01005 |
プリエンプティブル料金というのは、待機状態のVMの利用料金です。値段が安い代わりに、いつでもシャットダウンさせられる可能性があります。冗長性が備えられたアプリやバックアップ目的の利用で推奨されるようなイメージだと思います。
タイプ | 価格(GB 単位/月、米ドル) |
---|---|
標準設定容量 | $0.040 |
SSD 設定容量 | $0.170 |
リージョン標準設定容量 | $0.080 |
リージョン SSD 設定容量 | $0.340 |
スナップショット ストレージ | $0.026 |
マルチリージョン スナップショット ストレージ | $0.026 in each multi-region |
IO オペレーション | 追加料金なし |
トラフィックの種類 | 料金(米ドル) |
---|---|
上り(内向き) | 無料。ただし、ロードバランサなどの上りトラフィックを処理するリソースがある場合は除きます。リクエストに対するレスポンスは下り(外向き)としてカウントされ、課金されます。 |
同一ゾーンへの下り* | 無料 |
Google のサービス(YouTube、マップ、ドライブなど)への下り(GCP 内のトラフィック送信元の VM が外部 IP アドレスを持つか内部 IP アドレスを持つかは問わない) | 無料 |
同一リージョン内の DoubleClick への下り | 無料 |
外部 IP アドレスまたは内部 IP アドレスを使用した同一リージョン内の異なる Google Cloud サービスへの下り(Memorystore for Redis、Filestore、Cloud SQL は除く) | 無料 |
同一リージョン内のゾーン間の下り(GB あたり) | $0.01 |
Memorystore for Redis への下りには、「同一リージョン内のゾーン間の下り」の料金が適用されます。 | |
Filestore への下りには、「同一リージョン内のゾーン間の下り」の料金が適用されます。 | |
Cloud SQL への下りには、外部 IP アドレス経由のトラフィックに記載されている料金が適用されます。 | |
US とカナダのリージョン間の下り(GB あたり) | $0.01 |
ヨーロッパ内のリージョン間の下り(GB あたり) | $0.02 |
アジア内のリージョン間の下り(GB あたり) | $0.05 |
南アメリカ内のリージョン間の下り(GB あたり) | $0.08 |
大陸間の下り(オセアニアを除く)(GB あたり) | $0.08 |
オセアニア†と任意のリージョン間の下り / 上り(GB あたり) | $0.15 |
タイプ | 料金/時間(米ドル) |
---|---|
静的 IP アドレス(割り当て済み、未使用) | $0.010 |
標準 VM インスタンスで使用されている静的 IP アドレスとエフェメラル IP アドレス | $0.004* *プロモーション: 2020 年 1 月 1 日から 2020 年 3 月 31 日まで、課金は免除されます。 |
プリエンプティブル VM インスタンスで使用されている静的 IP アドレスとエフェメラル IP アドレス | $0.002* *プロモーション: 2020 年 1 月 1 日から 2020 年 3 月 31 日まで、課金は免除されます。 |
転送ルールにアタッチされた静的 IP アドレスとエフェメラル IP アドレス | 無料 |
結論
唯一完全無料のVPSのGCEの紹介でした。無料の性能と条件、超過時の料金を整理しました。
ひとまず、メモリー1 GBという点にだけ注意して、できる範囲で実験・開発に利用してみるとよいでしょう。
アカウント登録から、操作方法・GNU socialの設置方法などを今後掲載予定です。
GNU socialやPleromaなどの開発環境構築手順書のつもりで用意して、開発者の手引きにしたいと思います。
詳細プロフィール。SNS: Twitter/GS=gnusocialjp@gnusocial.jp/WP=gnusocialjp@web.gnusocial.jp。2022-07-17からgnusocial.jpとweb.gnusocial.jpのサイトを運営しています。WordPressで分散SNSに参加しています。このアカウントの投稿に返信すると、サイトのコメント欄にも反映されます。
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