概要
- 書名: 女子はなぜネットを介して出会うのか
- 副題: 青年期女子へのインタビュー調査から
- 著者: 片山, 千枝
- ISBN: 9784787235121
- 出版: 2022-09-27
- 読了: 2022-11-11 Fri
- 評価: ☆4
評価
「速報: 分散SNSでの未成年淫行逮捕の噂 | GNU social JP」で過去に報じたとおり、2022-10-20頃に分散SNS上で未成年淫行など女子による問題が話題でした。これ以外にも、ちょうどSNSでの未成年淫行の報道が全国ニュースで連日報道されていました。
そのときに、たまたま「「未成年女子」はなぜネットを介して出会うのか…出会い系「以外」に出会いを求めるワケ(飯田 一史) | マネー現代 | 講談社」の記事を見かけました。内容がタイムリーでしたので、今後も再発するであろう分散SNSでの少女によるトラブルへの知見を深めるために読みました。
青年期女子が特にネットの出会いに積極的で、トラブルに発展しやすいというデータから、青年期女子のネットの出会いにフォーカスしたインタビューベースの調査結果をまとめた本になっていました。
著者は社会情報学が専門の学術博士で、著者の研究成果を書籍として出版したもので、学術性の高い専門書でした。つまり、専門家向けの論文に近い体裁の書籍でした。
論文らしく、序論、先行研究、インタビュー・データ分析を中心に多数の参考文献の引用を散りばめながら記載されていました。論文を読むのは久しぶりで、なかなか重い内容でした。一般の人が読むのはしんどいかもしれません。
また、個人的に文系研究者に傾向が多く感じる、あまり重要でない内容をだらだらいつまでも記載する傾向がみられ、読者が知りたいと思うだろう内容はごく一部でした。
この分野の最近の研究はそこまで進んでいないようなので、そういう意味では価値のある書籍でした。
特に重要な内容を以降で引用しながら整理します。
参考
p. 214: 教育的立場にある大人は何ができるのか
この節では、大人ができる対策を議論していました。現実的にには以下の3点に絞られるようでした。
- ネット・リテラシー教育の充実。
- 保護者がネットモラル・リスクの知識を身に着け、地域で青少年のネット利用を見守り、指導。
- サイト運営者の協力。
この他に、免疫論と所持否定論も検討されていました。しかし、どちらもあまり現実的ではないという判断があり、上記3点がポイントのようでした。
p. 243: まとめ
この節で本書の内容全てが総括されており、ここだけ読めばエッセンスが全てわかるようになっていました。以下でその要約を掲載します。
一部の出会い経験者は社会的補償のため、「能動的出会い」を実現している。
動機は以下3点が先行研究から有力で、調査の結果1と3が有力。
- 対面関係の充実 (社会的補償仮説)
- 対面関係充実者のさならなる他者との関係充実 (the rich get richer仮説)
- 自身に意志はないが、友人・知人・家族の付き合い (受動的出会い仮説)
ただし、1の社会的補償のための出会いは、一時的なものになることが多く、実際には補償にはならない。しかし、それでも社会的サポートが少ないものは家族や学校などの「選べない縁」の補償を求めて出会いを反復する。
ネットを介した出会いは一時的になりやすい。理由は3点。
- 点の数が多すぎて関係を深める時間や余裕の欠如。
- 他者との関係を自分の都合や嗜好に合わせてカスタマイズ可能。
- 関係性の点→面への発展スキルの欠如。
青年期という時期は試行錯誤しながらアイデンティティの確立が課題。自己判断・決断能力が不十分で、このような不安定な状況で、家族・友人・知人関係が良好でない場合、ネットを介して出会う相手に期待・依存する心理がより強く働く。
結局、ネットを介した出会いを求めるものは、身辺環境に問題があることが多いので、そちらの解決が根本解決になるように思いました。
結論
青年期女子がネットでの出会いに積極的なメカニズムを調査した書籍でした。
本書を読まなくても、ある程度想定できる内容でしたが、調査により明確になったのは良かったかもしれません。
そもそも、ネットでの出会いは一時的なものになることが多いです。しかし、出会いを求める女子は、周辺環境に問題がある場合が多く、周辺環境の補償を求めて出会いを求めるも失敗し、それでも反復するというなんとも儚いものでした。
それに対して、周囲の大人ができることは、教育、見守り、サイト運営者の協力の3点しかなく、特に3点目のサイト運営者の協力が、分散SNSユーザーとしては一番重要な点だと思いました。
正直なところ、根本原因は出会いを求める女子の周辺環境にあるので、第三者ができることには限界があり、厳しく感じました。
ただ、メカニズムや有効な対策方法がわかったので、今後はサイト運営者に進言するなど、できることを心がけたいと思いました。
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